古いオーク材

2010年の春、カペラゴーデンの学期の終わりが近づいた頃、近くのワークショップが閉鎖されるという話が学校に届いた。その木工所の老クラフトマンは仕事を止めるらしく、欲しいものがあれば取りに来いとのことだった。工作機械や材木をもらうことになり、生徒何人かでひきとりに出かけた。50年以上働いた機械や今では手に入らないような古い合板、目のつんだパイン材など、めぼしいものを学校へ運び込んだ。その中にオーク(ミズナラ)の薄い板が1枚あった。

ある生徒が僕に「おまえ、あのオークの材料見たか?」と聞いてきた。僕はまだ見ていないと答えると、彼は僕を連れて埃を叩きながら、よく見てみろと言った。巾300mm、長さ2Mくらい、厚み15mm程度、素直で奇麗な板目のよい材料だった。材料の端っこにスタンプが押されていて、そこには「HOKKAIDO」と書かれていた。北海道のミズナラが遥々スウェーデンまで来ていたのだった。1960年代までは北海道からヨーロッパにミズナラを輸出していたことは知っていたが、まさかその木に実際に触れることができるとは思っていなかった。彼は「これはおまえが日本に持って帰れ」と言った。僕は1年の最後の仕事として、そのオークで小さな箱をつくり、残りの材料を日本に持って帰った。

ここでたくさんの素晴らしい人と出会ったが、最後に思ってもみない木と出会うことができた。

Old oak from Hokkaido

At the end of the semister of Capellagarden 2010, I found a very interesting oak plank. It was from an old workshop near the school. An old craftsman quitted his workshop and we went to his place to get woods and machines. By the late 60s, oak had been exported from Hokkaido to Europe and it was one of them.

文/写真・清水徹
2010.08.25

text/photo Toru Shimizu
2010.08.25